#125 パジャマ

2016.01.28

 テレビをぼんやり見ていたら「パジャマ、スウェット、ジャージ、どれが最も寝やすいのか科学的に検証しよう!」という企画があった。「え、パジャマじゃないってこと?」と思ってどきどきしながら最後まで見た。結論はパジャマだった。

 もうなんなんだそりゃである。どうしてそれで企画成立したと思ったのか教えてほしい次第である。と、脱力至極であったわけだが、「パジャマは寝やすい」という当たり前の事実が妙に印象に残ってしまって、いつも実家に帰省するときは適当な部屋着だけ持っていってそれで寝ちゃうんだけどこのまえの年末の帰省に初めてパジャマを持参してみた。科学的に検証されただけあって完璧な寝やすさだった。あの番組に感謝したい。

 子どもの頃は、部屋着という概念がなかった。基本的に動きやすい服、ほぼジャージかトレーナーしか着ていなかったからだ。故に僕の衣料といったら「パジャマか、そうでないか」の二択でしかなく、着替えもそのタイミングでしか発生しなかった。

 今は、家では部屋着である。平日の朝も、休みの日も、起きたらいちど部屋着に着替える習慣である。僕にとってパジャマを着続けていることは、朝であれば「まだ寝直す可能性があるぞ」という意気込みだし、夜であれば「眠くなったらこのまま寝るぞ」という意気込みである。パジャマは寝間着である。超当たり前である。このようなパジャマの認識は子どもの頃から変わらない。がっちり植えつけられて揺るがない。

 それだけに小学生のとき、同級生のT君が僕をパジャマで迎えたことは大いに衝撃だった。たしか日曜日の昼間だったと思う。家に遊びに来た僕をパジャマのまま迎え入れパジャマのままで遊んだ彼の対応は僕の先入観を揺さぶった。え、パジャマって、着てていいの? 起きてるのに、いいの? 家族以外の人間がいても、いいの?

 しかも驚くべきことにそのパジャマはオシャレだったのだ。野球のユニフォームを模したようなデザインの、パジャマだと言われなければ一瞬わからないような、実際、一瞬、わからなかったし、でもパジャマだし。鈴木少年はぶったまげ、そして混乱した。パジャマがオシャレってどういうこと? なぜ? なんのために? ジャージかトレーナーしか着ることのない鈴木少年は理解できない。パジャマとオシャレがつながらない。

 パジャマって基本的にはプライベートなものだと思うのだ。で、そんなプライベートなものでもオシャレしましょうね、というのは、大人になった鈴木からすればまあわからなくはない。小学生のことだから親の意図だった可能性も十分あるし、小学生ながら本人が気に入ったパジャマだったのかもしれないし。ただ、オシャレだからってパジャマでなあ、そういうもんじゃないんじゃねえかなあ……という思いは拭えない。

 でも、たしかにパジャマがプライベートではなくなるときがあって、たとえばパジャマパーティーなんてあるでしょう。最近じゃありませんか? ありますよね? 僕が呼ばれていないだけで今でもあるんですよね? あれって非常にパブリックに近いパジャマじゃないですか。セミパブリックというか。きっと本来プライベートなものがパブリックになる中間地帯に絶妙なエロさが宿ると思うんですよね。いや、パジャマパーティーだなんて破廉恥なもの僕はしたことないですけどね。破廉恥じゃないですか? 破廉恥ですよ破廉恥! パジャマパーリーピーポーは全員破廉恥! おまえらパジャマで何してるんだ! どんな話をしてるんだ! どうして僕には招待が来ないのか! 僕がオシャレなパジャマを持っていないからか! ジェラートピケにでも行きゃあいいのか! 畜生!

 まあいい、このぐらいにしといてやろう。なんにせよセミパブリックなパジャマというのは僕もまだ理解できるという話だ。僕も自分の実家じゃなくて妻の実家に泊まるときは、ヨレヨレだったり穴があいてるようなものではなく比較的きれいめなやつをチョイスすると思う。エロのないセミパブリックパジャマである。ジェラートピケも必要ない。

 わからないのは、パジャマを外に着ていく行為だ。それもだらしない人というのではなく、ファッションとして、オシャレ着としてのパジャマというやつ。パジャマルックとかいうやつ。きっと「敢えて」だとは思うのだ。思うんだけれどオシャレレベルが高すぎて僕の中の鈴木少年が眩暈でクラクラする。もちろん本当にパジャマというわけではなくて外出着用のパジャマなのだろうが、そのまま実際に寝てたりするのかな。きっとしてるんだろうなレベル高い人たちはな。それって破廉恥かな。破廉恥じゃないなあ。パブリックすぎるとエロくないんだなあ。

 ドラクエに「戦士のパジャマ」っていう装備(鎧)があったと思うんだけど、これは破廉恥でもオシャレでもなくただただだらしない戦士のイメージである。


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鈴木拓磨 SUZUKI Takuma / suzukishika(鈴木鹿)

コピーライター。札幌の広告制作会社に勤務しています。
1982年早生まれ / 小樽市出身 / 札幌市在住 / 文房具とビールが好物
Shikalog / Twitter / Facebook / mail: suzuki at mark suzukitext dot com