#106 故障

2015.09.17

 実家がテレビ運なさすぎてウケる。体感的には僕の携帯電話の機種変更と同じぐらいテレビが変わる。僕は自分の実家で年越しするのが隔年ペースなのだが、紅白歌合戦を毎回違うテレビで見ている気がする。なにも贅沢で買い替えているわけではない。壊れるのである。

 僕が子どもの頃はそんなことなかった。物心ついたとき家にあったリモコンのないテレビも、その後に初めてリモコンがついたテレビも、それなりに長くつきあってきた。おかしくなってきたのは、やれワイドテレビだなんだと言われた頃からだろうか。テレビを見ていて急に画面が暗くなったり、極端に映りが悪くなったり、しまいにゃ見られなくなったり、変な音がしたり。それもまたサッカーの代表戦だとか、いいときに見られなくなるんだこれが。のび太のママのようにチョップで復活させられればよいのだけれど、そううまくはいかない。

 そしてこの夏、帰省した僕は実家の新しいテレビを見た。また逝った。二年で逝った。地デジ化してから何台目のテレビなんだキミは。笑うしかない。ウケる。

 家の中に据え置かれて、水に濡れるわけでも衝撃を受けるわけでもないものがどうしてこんなに故障するのか。テレビを見過ぎているわけでもあるまいし、特別酷使していることはないはずなのだ。風水的に最悪な位置にテレビがあるぐらいしか可能性が思い当たらない。

 両親もさすがに電気屋(地元の個人経営の電気屋だ)を変えようと考えたらしい。そりゃそうだろう、むしろ今までずっと同じ店で買い続けてきたほうが僕には驚きだ。ところが、電気屋のほうもさすがに、さすがにだなと思ったのだろう。在庫のうちの一台を、無料で提供してくれたとのことである。無料で、さらに大型になってしまった実家のテレビ。よかったね。まあ、これで終わるとは思えないけどね。

 実家がこれだけテレビの神様に見放されているにもかかわらず、僕の暮らす部屋ではこれまで家電の故障らしい故障に遭遇したことはほとんどない。テレビはもちろん冷蔵庫や洗濯機といった白物家電も問題ない。一般的な故障への遭遇率ってどれぐらいなのかどうかわからないけれど、相当低いのではないかと感じている。もしかすると、僕のぶんまで両親が身代わりになってくれているのかもしれない。おやじ、おふくろ、ありがとう。これからもテレビ壊れてください。

 今までの自室で故障したものといえば、パソコンと、ハードディスクレコーダー。つまりはどちらもハードディスクである。ハードディスクは消耗品だというけれど、本当なのかもしれないなあと思う。大学時代に買った八〇ギガの外付けハードディスクはまだ生きてるけど。

 据え置きのものよりも故障する確率が高いのは持ち歩く製品だ。僕はクッションのきいているブリーフケースに入ったノートパソコンを雪道に落として、壊してしまったことがある。大学四年の冬だ。卒論が終わっていてほんとうによかったと今でも思い出して背筋が凍る。

 しかし、携帯電話は故障したことが全然ない。毎日持ち歩いているし、ときどき床やアスファルトの路面に落としたりもしているのに、壊れたことも画面が割れたこともないし、水没させたこともない。クッション入りのバッグの中のノートパソコンは壊れたのに……やっぱり打ち所っていうのがあるんだろうな。

 ああ、でも一度だけ、最初に勤めた会社で、職場支給の携帯電話が壊れたことがあった。イベントの本番真っ只中に、業務連絡を普通に着信して、普通に通話して、普通にパタンと閉じて、次に見たときにはもう画面が落ちていて、二度と電源が入らなかった。あれはやばかった。入社一年目のペーペーが、肝心なときに携帯電話がつながらない状況。説明しようにも説明できず、怒られてから謝るしかない状況。これが、僕がストレスのあまり携帯電話を叩き割ったとかだったらまだ自分でも納得がいくし謝りようもあるというものだが、通常使用中の突然死だもの。あれは本当に困った。今、書きながら冷や汗かいてきた。

 そういえば仕事の備品という意味では、取材先でデジカメのレンズのオートフォーカスが故障していた、っていうこともあったっけ。カメラにまったく詳しくない自分がオートフォーカスのおかげでなんとかなっていたものを、それが突如として失われて、マニュアル操作はできなくて、取材スタッフは僕ひとりで、写真は撮らなきゃいけなくて、ぜんぶピンボケというわけにはいかなくて、汗だらだらで、たまたま鞄に入っていた私物のコンデジでなんとかこんとか凌いだっけ。あれはやばかったほんと。ああ、今も手汗が。

 あれ……こうして書き出してみると、僕もけっこういろいろ故障してるぞ。両親が身代わりになってくれているわけではなかったのか。親子揃ってか。故障の血筋か。遺伝か。


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鈴木拓磨 SUZUKI Takuma / suzukishika(鈴木鹿)

コピーライター。札幌の広告制作会社に勤務しています。
1982年早生まれ / 小樽市出身 / 札幌市在住 / 文房具とビールが好物
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