#94 炭酸

2015.06.25

 炭酸水で痩せた。事実、炭酸水がなければ僕のダイエットは成功しなかったはずだ。断言する。

 前提として僕は晩酌をしていた。ほぼ毎日していた。主に缶ビール、缶チューハイを好んで飲んだ。特に夏の暑い季節など、北海道のアパートには冷房なんかないから(最近はそうでもないみたいだけど)、喉が渇いたらすかさず飲んだ。ぐびぐび、がぶがぶと飲んだ。

 酒のカロリーは太らないという説もあったりなかったり正直よくわからないのだけれど、そもそもアルコールを抜きにしたって炭酸ジュースである。ビールイズ麦スカッシュである。それを毎晩、何本も飲んでいれば太るに決まっている。それだけが理由じゃないにせよ、僕は太った。社会人になってかなり太った。

 ジュースのがぶ飲み(に等しい行為)はよくないなと思って、せめてもとハイボールを飲むことにした。時は二〇〇九年頃、ハイボールが流行り始めていたというのもあるけれど、僕の父が昔からハイボール党だったので個人的にも親しみがあった。安いウイスキーと炭酸水、という実家に常備の組み合わせ。ウイスキーはいいとして、自分で炭酸水を買い求めるのはほぼ初めてだった。

 近所のスーパーで炭酸水を物色。何種類かある。安い。と、そこで目が留まったのはクリスタルガイザーのスパークリングレモンというやつ。父がハイボールをつくるとき、無味の炭酸水にポッカレモンを一垂らししているのを思い出した。最初からレモン風味がついた炭酸水なら手間も省けるだろう。そう思って買ってみた。

 結果的には大成功だった。それなりに美味しいハイボールが簡単にできた。だが、それ以上に、クリスタルガイザースパークリングレモンは、そのまま飲んでも美味しかったのである。

 炭酸の具合が強すぎず弱すぎず、僕にとってちょうどいい。レモンフレーバーも濃すぎず薄すぎず、なにより甘くないのが素晴らしかった。ハイボールも飲んだが、そのままでも飲んだ。暑い夏の夜にぐびぐび飲んだ。がぶがぶ飲んだ。缶チューハイより安いし、やはり炭酸の刺激は暑いときにぴったりだ。

 二〇一〇年から一一年にかけて、僕は痩せた。約二年間でゆっくりと着実に一五キロ落とした。基本的には僕はレコーディングダイエットで痩せたことになっているのだけれど、クリスタルガイザースパークリングレモンのおかげでもあると思っている(それと、炭水化物少なめの食事を用意してくれた妻のおかげである)。

 というわけで、すっかり甘くない炭酸の虜である。最近はその類の飲料がすっかり増え、選択肢が多くて喜ばしい。けれど、最初にハマったからか僕にとってはクリスタルガイザースパークリングレモンが不動のナンバーワンである。スーパーのPBでもレモン味炭酸が売られているけれど炭酸の具合やレモンの風味がどうにも好きになれない。職場の自販機にキリンのヌューダが入っていて、あれはグレープフルーツ味だけど、かなり好きなほうである。重宝している。

 思えば子どもの頃から炭酸が好きだった。僕にとっての炭酸といえばファンタグレープであった。ファンタグレープの三五〇ミリ缶を、半分だけ飲んでラップをして冷蔵庫に入れた。次の日に飲む、ほとんど気の抜けたファンタグレープも嫌いじゃなかった。

 コーラは、炭酸が強すぎて得意じゃなかったし、実際今でもそんなに好んでは飲まない。この前、スーパーで買い物中にどうしてもどうしても喉が渇いて、これは炭酸飲むしかないわと思って、つい出来心でコーラの細い缶を買ってしまい、会計直後に一気飲みして、レジのそばであやうく僕自身が破裂しそうになってしまった。細い缶だから飲みきってしまおうとしたのだが、完全に見誤った。コーラのポテンシャルを見誤ったのだった。大人なのに恥ずかしい。ぱつんぱつんの胃に冷や汗をかく大人。

 炭酸つながりでいえばビールは好きで、外で酒を飲むときはもっぱらビール党なのだけれども、ビールもほんと、アルコールによる酔いもさることながら、炭酸の圧で胃がやられるのがつらいよね。飲まされるような席では特に。あれはきつい。きつかった。ピッチャーは嫌いだ。

 ところで炭酸入り紅茶を飲んだことはありますか。炭酸入りスポーツドリンクを飲んだことはありますか。たまに商品化されてコンビニに並ぶんだけれど、すぐに姿を消してしまうもの。あれ、僕、けっこう好きなのだ。どうしていつも、すぐになくなってしまうんだろう。たしかに意外性は否めないけれど、けっこう美味しいと思うのだがなあ。

 この前は、紙パックの豆乳飲料の「ジンジャーエール味」を見つけたので飲んでみた。もちろん炭酸は入っていないのだが、たしかにジンジャーエールで興味深かった。炭酸は「ピリピリ来る感じ」で表現されていて、すげえ工夫だなと思った。パッケージには「無炭酸ジンジャーエール味飲料」とあった。無炭酸。


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鈴木拓磨 SUZUKI Takuma / suzukishika(鈴木鹿)

コピーライター。札幌の広告制作会社に勤務しています。
1982年早生まれ / 小樽市出身 / 札幌市在住 / 文房具とビールが好物
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