ただの思い出話をするぞ。検索すれば正確な情報は出てくるだろうが記憶だけで書く。北海道苫小牧市にあった屋内遊園地「ファンタジードーム」のことだ。ファンタジードームはJR苫小牧駅前にあった。今はもうないらしい。「らしい」と書いたのは、なくなってから一度も苫小牧駅を自分の足で訪れたことがないからである。

 子どもの頃、僕が唯一、何度も行った遊園地がファンタジードームだった。自家用車がなかった僕の家にとってJR駅直結というアクセスのしやすさはとても大きかったのだろうと思う。北海道の札幌近郊でいえば、たとえばルスツリゾートだとか、テイネハイランドだとか、三井グリーンランド(現:北海道グリーンランド)だとか、どこもJRでは直接アクセスできないところばかりだから。もしも僕が千葉県に生まれていたら浦安駅に行きまくりだったかもしれないし人生変わったかもしれない。たらればだ。たらればだが。

 なので、ファンタジードームができるまでは遊園地に連れて行ってもらった記憶がほとんどない。地元の「おたる水族館」に隣接した小さな遊園地と、同じく小樽にあった「こどもの国」で遊具に乗った記憶はあるが、それぐらい。そこそこの規模を有した遊園地という意味では、僕にとってはファンタジードームこそがワンアンドオンリー、ファンタジードームこそが遊園地のデファクトスタンダード。僕はファンタジードームっ子だった。

 しかし僕は、遊園地の遊具が苦手であった。子どもの頃は非常に乗り物酔いをしやすいたちだったというのもあるが、今でも絶叫系などもってのほかである。だけど、そんな僕にもファンタジードームはやさしかった。絶叫系にくくられるような遊具はなく、すごいのはせいぜいローラーコースターぐらい。それもループのない、つまりは逆さまにならないやつである。いちおうそのローラーコースターがファンタジードーム的には最も目玉な遊具であったわけだが、それでも僕は怖くて、あの上っていくときの過度な緊張と、最初にわーっと滑走するときのあの無重力感が怖くて、ファンタジードームへ行っても一度もローラーコースターに乗らずに帰ることもしばしばであった。

 じゃあそんな僕がなんで何回も喜んでファンタジードームを楽しんでいたかといえば好きな遊具もあったからで、今でもおぼえているのは「ミュージックエクスプレス」という音楽を鳴らしながらグルグル回るやつと、「ハンテン」というグルグル回るやつ。なんにせよ、グルグル回るやつが好きだったようである。「ハンテン」では何度か酔った記憶があるが。でもきっと、「遊園地」ってだけでうれしかったんだろうなあと思う。

 ファンタジードームに連れて行ってもらったのが、どういう日だったのかはわからない。小学校が休みな日曜または夏休みか冬休みで、なおかつ父が休みの日。というだけで、特に何か特別な日だったということはなかったように思う。世の中の家族は、どんなときに遊園地へ行くのだろう。誕生日だから遊園地だ、とか、そういうのはあまりイメージがわかない。子どもらが「連れて行け」とせがむのだろうか。今の子どもも遊園地に行きたがったりするんでしょうかね。仮に遊園地に行っても結局ずーっと手元のゲームばっかりやってるんじゃないんだろうか。勝手な想像だけど。それとも親が何か思うところがあって「明日は遊園地だ!」と高らかに宣言するのだろうか。あるいはそれの複合型、子どもらがせがみ、せがみ、せがみが蓄積してある閾値に達したとき、親的にも「そろそろだべか」と感じたときに、堰を切るようにレッツ遊園地のムードが訪れるのだろうか。不思議だ。

 北海道であればふつう、冬に遊園地ということは考えにくいから、たとえば五月のゴールデンウィークなどに「雪もとけたし、あったかくなってきたから行くべ行くべ」ということはありそうだ(まあ、五月も日によってははまだまだ寒くて後悔しそうであるが)。その点、ファンタジードームは屋内だったから、つまりオールシーズン、オールウェザー対応であって、そこんところも親にしてみれば非常に重宝したのだろう。そしてまた、そのことが僕に「どんなときに行ったのか」を思い出させない原因となっているかもしれない。

 そうそう、そういえば「階」があったんだ、屋内だから。ふつう遊園地に階なんてないが、ファンタジードームにはあった。で、大空間が吹き抜けてて、そこをローラーコースターなんかがどひゃーんと通り抜けるのだ。

 ファンタジードームがなくなってどれだけの歳月が経ったのだろう。今でも僕にとって苫小牧という街はファンタジードームの街のままである。行きたいなあ、ファンタジードーム。帰りのJRでビール飲みたい。


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鈴木拓磨 SUZUKI Takuma / suzukishika(鈴木鹿)

コピーライター。札幌の広告制作会社に勤務しています。
1982年早生まれ / 小樽市出身 / 札幌市在住 / 文房具とビールが好物
Shikalog / Twitter / Facebook / mail: suzuki at mark suzukitext dot com