#53 雑誌

2014.09.11

 雑誌は、髪を切りに行ったときに読むぐらいがちょうどいい。待ち時間を潰すための、潰すといってもそれなりに楽しく潰せて、あわよくば新たな知見を得られたらラッキー、得られずとも別にオッケー、読んでる途中で呼ばれても、まあいっか、ぐらいの。雑誌の他にマンガの単行本がずらっとあったりする美容室もあるし、あれはあれで読んじゃったりするんだけど、やっぱり雑誌が気楽。

 髪を切りに行ったときには、せっかくなので普段読まないような雑誌、自分がターゲットではないような雑誌を読むようにしている。店員さんはスポーツ雑誌とかアウトドア雑誌とか持ってきてくれて、それはそれで読みたいものもあるんだけど、自ら手に取るなら女性ファッション誌。企画が面白い。読ませる。よくインターネット界隈でネタにされたりすることもあるけど、着回しコーデなんちゃらとか、この靴とこのパンツは合う合わない一覧表とか。ファッション誌でいったら男性誌より断然面白い。やっぱり歴史と競争があるからなのか、そこにある蓄積とハングリー精神が違う気がするよねえ。仕事柄参考になるというのもあるけど、いち読者として面白いです。

 面白い雑誌には企画がたくさん必要だというのは、群雄割拠の女性ファッション誌を読んでいるとよくわかる。書籍は、もちろん企画満載の書籍もあるけれど、別にワンテーマでいいというかむしろワンテーマをじっくり掘り下げていくのが書籍らしさというか。雑誌は仮にワンテーマあったとしても、それをとにかくいろいろいろいろな切り口でザックザクやる。切り刻む。そう、切り口の多さが要求される。いろんな企画のネタ探しに「雑誌をめくる」のがベタな方法論としてあるのは、そういうところなんだろうなあ。

 総合誌であれ、専門誌であれ、そのレンジの差こそあれ、ある一定のテーマに基づいた記事、コラムやエッセイなどの読みもの、写真やイラストレーションといったビジュアル表現の集積。たしかにバラエティに富んだ冊子ではあるけれど、それを漢字一文字「雑」で表しちゃうなんて、それこそ雑ではあるまいか。まあ、書籍に対する概念なのかもしれないけれど。「雑誌」っていう言葉、または雑誌というものは、日本にいつ頃からあるんだろうか。明治維新以降でしょうかね。調べないけど。

 原則としては、どこから読んでもいいし、どこで読むのをやめてもよい。読まないページがあっても全然いい。それが雑誌というものだ。が、僕はいかんせん貧乏性なもので、頭から隅から隅まで読みたい、むしろ読まねばならないという強迫観念めいたという気持ちがどうも捨てきれないのである。雑誌なのに、実際には書籍的に読んでしまうのだ。特に自分で購入するということになると貧乏性は加速する。それは僕の雑誌の買い方とも関係しているだろう。特集テーマが面白そうなときに単発で買うだけ。定期購読はゼロ。これも、やっぱり書籍的な付き合いかただと思う。ムック的といってもいいかもしれない。ムック(mook)って、マガジン(magazine)+ブック(book)だもんね。ムック、いつの間にかすごい増えたよね。または雑誌がムック化してるよね。

 加速した僕の貧乏性は、読むときだけでなく読んだ後にも発揮される。読み終わった雑誌なんて処分してしまえばいいのだろうが、捨てどきがわからないのである。大量の広告ページも含めた冊子全体をとっておくのも場所の無駄だし、かといって捨ててしまうのももったいないというか、書籍ならまだ「後からでも入手できる」気がするのだけれど、雑誌は世の中にアーカイブされにくい、フローな情報であるように思えるのだ。

 今だったら、裁断してデータ化して、当該の記事だけを保存しておけばいいのだろう。で、だったら最初からウェブでいいじゃん、となるのだろう。本来ノンリニアなメディアである雑誌をリニアに扱ってしまっているのが僕の雑誌観の袋小路であって、記事ごとに分断されているようなウェブのほうが雑誌のノンリニア性とは相性がよいのかもしれない。逆に、リニアなものは紙のほうがいいのかも。

 今後、僕が紙の雑誌を定期的に購読する生活は果たしてあるかどうか。どうだろうなあ。子どもの頃の『コロコロコミック』や『ギャグ王』、そして『中学コース』を最後に途絶えた定期購読習慣を取り戻す日は、しばらくは来そうにない気がしている。それがウェブに取って代わられるのか、または既に取って代わられているのか、いわゆる「雑誌の古き良き時代」を知らない僕にはよくわからない。その古き良き雑誌を誰が殺したのか、僕は知らない。付録だ付録! 付録をつけて記事広告を売れ!

 僕は美容室で女性ファッション誌を読む。ゆるふわ愛されコーデについて学ぶ。


face

鈴木拓磨 SUZUKI Takuma / suzukishika(鈴木鹿)

コピーライター。札幌の広告制作会社に勤務しています。
1982年早生まれ / 小樽市出身 / 札幌市在住 / 文房具とビールが好物
Shikalog / Twitter / Facebook / mail: suzuki at mark suzukitext dot com