#50 湿布

2014.08.21

 元ミッシェル・ガン・エレファント、現ザ・バースデイをはじめ活躍中のドラマー、クハラカズユキ(キュウちゃん)のブログをよく読んでいる。彼のバンドの音楽が好きなのもあるが文章のファンなのである。北海道出身ということもあって時折ぶっこんでくる北海道ネタもグッとくる。そんなキュウちゃんのブログに最近登場したのが「湿布入れ」の話である。

 長年連れ添った湿布入れの袋が破れたため引退させ、今回のツアーで物販しているポーチに替えたよというエピソード。写真付き。たしかに湿布を入れるのにちょうどよさそうなポーチでありまして、デザインもサイズもグッドでして、あら素敵、僕も買い求めようかしらん、というひとしな。ただ、ひとつだけ引っかかったのは「湿布入れ」という物を僕はいまだかつて用意したことがない、ということだ。

 なんちゅうかいろんな感情が生まれ出づるわけで。キュウちゃんもう四十代だしな……というかやっぱりドラマーだから? 体力勝負のドラマーにしてみたら湿布を持ち歩くって普通なのだろうか? ああそういえば日頃ランニングもしているようなのでそれもあるのかも? などなど。そう考えたら、なんだか旅に湿布入れはマストな気がしてきて。そうだそうだ買ったことあるわ僕も、旅先で湿布。旅行では歩きすぎるので、寝るときは足の裏に湿布貼るといいよね。

 まあまあ湿布にはお世話になってきた。中学の頃から腰痛持ちのために、痛んだ折にはペタペタ。部活のバスケで膝を痛めてはペタ。大人になってからは仕事でパソコンをさわりすぎ、ペンを持ちすぎでもって手首や手指が腱鞘炎みたいになっちゃって、ペタペタペタ。最近ではランニングの後に膝が痛むときがあって(ランナーズ・ニーというらしい)、そんなときもペタ。

 体が痛かったら原則として湿布、というのは誰でも知っているセオリーだ。ランナーズ・ニーのようにストレッチで解消できるものもあるけれど、それでもいっぺん痛くなっちゃったら、炎症が起きちゃったら、それが引くのを待つしかないわけで、つまりは湿布の出番である。整形外科では最低限の検査をして骨にも異常はないってことになればだいたい湿布を出されて終わり、というのはよくあることで、そのことだけで地元の整形外科をヤブにちげえねえだとか高校時代に冗談で口走っちゃったことがあって、その場にいたクラスメイトがそこの病院の甥っ子だってことをそのとき初めて言われて、あれはマジで気まずかった。今でも思い出すと冷や汗。小野くんごめん。

 僕がいまだにわかっていないのは、冷湿布と温湿布との使い分けである。よく「急性は冷、慢性は温」とかいうけれど、まあ本当に痛めた直後はアイシングするものだとしても、その後はどうすりゃいいんだよ、という。そして結局「気持ちよく感じるほうを貼ればいい」というなんともユルい説を採用している。温湿布は気持ちいいときもあるんだけど、汗をかいて痒くなって剥がしちゃうことが多い。

 湿布を貼りづらい部位、たとえばもろっと露出している夏の腕や首、または貼っても貼っても剥がれてくる部位に関しては、湿布ではなく塗り薬を活用している。たとえばここ数年は肩こりの延長なのか、首の筋を違えてしまうことが年に数回あってたいへんきっついのだが、そんな折にはストレッチしつつもゲルタイプの薬をこってり塗っている。その便利さ、目立たなさ、使いやすさにすっかり虜であり、実をいえばここ数年は湿布よりも出番が多い。けれども汗などで流れ落ちてしまうし、本当なら湿布を貼っておいたほうがいいんだろうなーと思う。

 ねえ湿布。僕だってもっとお前を貼りたいよ。せめて夜は貼って寝たいよ。でもさ、お前ときたら朝には必ず剥がれてるじゃん。くしゃくしゃのぐにゃぐにゃになってベッドの中で行方不明になってるじゃん。それじゃ意味ないじゃん。のびのびしたり、フィルムに切れ目が入ったり、昔に比べれば使いやすくなっているだろうさ。もしかすると薬効成分も進化しているのかもしれない。けれども湿布よ、お前は、痛みに対するほぼ唯一のソリューションであるにもかかわらず、イノベーションが足りてないのではないか。なあ湿布よ。もっと貼らせておくれよあの日のように。

 そんなことを思ったり思わなかったりしながら先日、腰が痛くて久しぶりに湿布を買ってきたら、もうびっくり。湿布が「角丸」なの。たったそれだけのこと、それだけの工夫で、剥がれないわけですよ湿布が! 朝起きてもピッターン! ですよ。完全に目から鱗。劇的なイノベーション。もちろんその分製造コストがかかってるわけだが、多少高くても十分にこの商品を選ぶ理由になるよ僕にとっては。やるな、湿布。湿布を角丸にした人に、どうかノーベル医学賞あげてほしい。

 やっぱり買おうかな湿布入れ。キュウちゃんとお揃いのロックな湿布入れ。


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鈴木拓磨 SUZUKI Takuma / suzukishika(鈴木鹿)

コピーライター。札幌の広告制作会社に勤務しています。
1982年早生まれ / 小樽市出身 / 札幌市在住 / 文房具とビールが好物
Shikalog / Twitter / Facebook / mail: suzuki at mark suzukitext dot com