#30 静岡

2014.04.03

 新千歳から羽田、羽田から京浜急行で品川、品川から「ひかり」で一時間弱。三月の静岡駅に降り立った僕の率直な感想「あ、これは完全に春ですわ」。地元の方に言わせればここ暫くは寒いよーなんつって、こちとらかなり譲歩したつもりのフリースで汗だくです。んもう、日本ったら縦長なんだから。

 生まれて初めての静岡。厳密にいえば修学旅行やそのほか何度か、東海道新幹線で通過したことはあった静岡。トシがサッカー好きな静岡。ミニ四駆のふるさと静岡。電気もしりあがっちゃう静岡である。職場の先輩・いっこ上のKさんと、同い年カメラマンのN君。仕事の取材で訪れた野郎三人旅である。静岡に近づく新幹線の車中、サッカー好きのKさんに「なぜ静岡はサッカー王国なのか」を問うたところ、彼はすこしのあいだ窓の外を眺めてから「平らな土地がいっぱいあるからじゃないか」という旨の回答をしてくれた。なるほどそれも一理あると思えるほど、たしかに静岡はずんべらぼーんと広かった。

 都道府県にはメジャーとマイナーがある。出身者がどんなに謙遜しようが抗弁しようが、これはある。ちかごろはマイナー県による自虐キャンペーンも花盛りだ。自虐キャンペーン、個人的には全然アリと思っている。そうやって本当の意味でもマイナーがいっこずつなくなって、あるいは薄れて、日本各地のみんなが自分の地元以外の都道府県についても興味を持ったり、好きになったりしたらすごくいい。日本を愛するって、そういうことのような気がする。いきなり「日本」っていうものがあるんじゃなくて。

 それはさておき、そういう意味では静岡っていうのは「メジャー」である。どこにあるかはだいたいみんな知ってるし、その形もなんとなく知っている。誰でも知っているあの山も近くに見える。都道府県に有名とか無名とかいうのも変だけど、まあ、有名である。でも、通過はしたことがあっても、行ったことがある人ということになると実はさほど多くないのではないだろうか。ああでも関東の人は伊豆とか熱海とか行くのかな。あと御殿場のアウトレットとか。

 ここまでざっくり「静岡」と呼んでいたが、「静岡県」は広い。駿河湾をぐるりと囲みつつ、さらにその左側もけっこうある。この辺の地理や日本史にはあまり明るくないが、このたびの取材でお話を伺った方曰く「越すに越されぬ大井川」とかいって、かつては川幅も今よりずっと広かった大井川を境に方言や文化などがぶった切れるらしい。そういやダニダニ言ってた大学のクラスメイトの女の子は浜松市出身だったかしらとふと思い出す。ただ、周囲がダニダニ言ってると思ってただけで、本人がダニダニ言ってるのを聞いた記憶は一度もない気もする。

 僕が今回訪れたのは、静岡県の静岡市。ならびにお隣の焼津市だ。ぐるりと囲む左側。なんでも「遠州の空っ風」と呼ぶ風がつえーつえー。取材先はレタス農家さんだった。収穫中の畑に行った。大雨警報が出た。撮りに撮った。聞くだけ聞いた。水もしたたる三十代野郎三人、駆け込みユニクロコーデをきめた。

 さて、なじみのない土地へ出張となればやっぱり、夜は何が食べられるのよ飲めるのよ、という話になろうかと思う。静岡といえば。いろいろあるけど。いうまでもなく。青森といえばリンゴであるように。イエス、ウェー・セイ。

 お茶だよね。

 中学時代に読んださくらももこのエッセイマンガをうっすらと思い出しながら、その茶々しさに対してほんのりとした期待は抱いていた。とはいえ北海道だってウニイクラカニを毎日食べているわけではないのである。どれだけ名産だからといって、ウニイクラカニとは違って日常性の高い品だからといって、それほど茶々しいわけでもなかろう。と思っていた。

 そうしたら、静岡に着いたそのときから。ビジネスホテルの部屋には当然ティーバッグ。レンタカーの待合室にテイクフリーのティーバッグ。夜、居酒屋に行けばおすすめは「しぞーか割」と名付けられた焼酎の緑茶割。もうお茶プッシュ半端ない。静岡なめてた。静岡の茶々しさを完全になめてた。そしてうまい。もんのすんごくうまい。スルスル飲んじゃう。緑茶割、超うまい。宿泊した二晩ともパッコンパッコン緑茶割を飲んで、翌朝三時半起床でもスッキリ宿酔まるでナシ。静岡すげー。

 というわけで、静岡滞在中はトイレの頻度が普段の五割増だった。静岡の利尿作用、半端ない。静岡の人たちはきっと、毎日活発に利尿しまくっているに違いない。新陳代謝しまくりに違いない。これがサッカー王国の秘密かもしれない。

 農家さんから頂戴した朝とれたてのぴちぴち激うまレタスを六玉ぶん荷物を増やして、静岡から「ひかり」で品川まで一時間弱、品川から京浜急行で羽田、羽田から新千歳。

 静岡と新千歳の直行便は今のところ一日一往復。いつか使ってみたいけれど。


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鈴木拓磨 SUZUKI Takuma / suzukishika(鈴木鹿)

コピーライター。札幌の広告制作会社に勤務しています。
1982年早生まれ / 小樽市出身 / 札幌市在住 / 文房具とビールが好物
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